メディア情報

[’21/1/28] パドクター

毎月、街の情報誌 「ぱど」 に健康情報
ワクワク楽しい予防歯科ってなあに?
連載しています。

 

 

 

当院の歯科医師、入江先生森山知子先生執筆して頂いております。

今回は、森山知子先生です。

 

ワクワク楽しい予防歯科ってなあに vol.187

こんにちは。
ヨリタ歯科クリニックの、森山知子です。

今回は、酸蝕症についてのお話です。

酸蝕とは、酸性の強い食べ物や飲み物が原因で歯が溶け出してしまうことです。

むし歯とは原因が異なりますが、同じように歯を失うことにつながります。
歯科の専門用語では「脱灰(だっかい)」といいますが、歯のエナメル質から
リン酸カルシウムの結晶が溶け出した状態です。

このように、特定の飲食物によって歯が溶けた症状を酸蝕症といいますが、
非常にゆっくりと進行するため、これまでは大人にみられる症状だと
考えられてきました。

しかし、近年子ども達の食生活環境が変わり、大人だけでなく子どもでも
酸蝕症になるケースがみられるようになりました。

酸性かアルカリ性かは、ph値によって示されます。

ph値は、数字が小さいほど酸性が強く、数字が大きいほどアルカリ性が
強いことを表しています。

中性はph値7.0で、それより数値が小さければ酸性、
大きければアルカリ性ということです。

お口の中は、通常ph6.5~7.0で、弱酸性から中性となっています。

通常、私達のお口の中で唾液が十分に分泌されていると、酸を洗い流して
中和してくれるので問題ありませんが、歯の表面を覆っているエナメル質は、
ph5.5以下の酸性のものに対して弱く、酸性の飲食物を多く摂っていると
脱灰が起こってしまい、酸蝕症になるのです。

酸蝕症を起こす危険性のある飲食物は、私たちの周りにたくさんあります。

例えば炭酸飲料水や清涼飲料水、果汁ジュースなどの酸性飲料です。

炭酸飲料水はph値2.2~2.9、
オレンジやみかんなどの果汁ジュースはph値4.0前後が多く、
ビールもph値5.0以下のものがあります。

これらの飲み物をよく飲んでいる人は、酸蝕症の危険があるというこうことになります。

スポーツドリンクなど、健康的なイメージのあるものでも、酸蝕症の面からは
気をつけなければいけない場合があります。

牛乳や麦茶などはph値6.0程度のため、酸蝕症のリスクはほとんどないでしょう。

食べ物では、柑橘系の果物に注意が必要です。
レモンやグレープフルーツはph値3.2以下ですから、酸蝕症のリスクが高い食べ物です。

ただ、これらの酸性の食べ物は栄養素として体に良いものが多いことも事実です。
そのため、歯のことを考えると、その食べ方がポイントになります。

一日に何回もたくさん食べたり、ダラダラと長時間食べたり、寝る前に食べることは
避けたほうが良いと考えられます。

酸性の飲食物を摂ってはいけないということではなく、食べ方に気をつけるだけで、
酸蝕症のリスクは抑えられるのです。

酸蝕症の予防には、適切なブラッシングを心がけることが重要です。
ブラッシングの歯磨き圧は、毛先を歯面に当てたときに
毛先が軽くたわむ程度(150g~200g)が良いでしょう。

歯磨き圧が強すぎたり、乱暴であれば、エナメル質は摩耗します。
酸性食品の摂取頻度が高まれば、一気に酸蝕症が進行してしまうリスクがあります。

また、フッ素による歯の再石灰化で修復力を強化することも大切です。

酸によって剥がれた表層のエナメル質も、再石灰化で修復できれば歯にとって
大きな問題はありません。

フッ素は市販の歯磨剤にも含まれていますが、歯科医院で高濃度フッ素を
定期的に塗布することが、歯質強化には有効です。

酸蝕症は自分では気づきにくいかもしれません。これまでの食習慣によって
酸蝕症になっているかもしれないと思われた場合は、歯科を受診することをおすすめします。

むし歯も歯周病も酸蝕症も、早目の対応が肝心です。

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