「Floss or die(デンタルフロスか、死か?)」は、本当か?
「Floss or die」?直訳すると、デンタルフロスか、死か?
つまり、「(歯周病予防の為に)デンタルフロスを使いますか? それとも(歯周病が原因で動脈硬化になり)死にますか?」という意味で、歯周病になると動脈硬化の確率が上がり、心臓病等になりやすいので注意しましょう。
これは、1998年にアメリカの歯周病学会と、マスコミが唱えたキャッチコピーです。
しかし、昨年アメリカ心臓病学会(AHA)がこのキャッチコピーに異を唱えました。500本を超える研究データの精査した結果「歯周病と動脈硬化の関連性はない」と公式声明を発表したのです。
アメリカ心臓病学会が、このような「科学的声明」発表をすることは異例の事だそうで、米国歯科医師会も支持している事から、「歯周病と動脈硬化の関連性」という長年の議論にひとつの結論が出たことになります。 (何故か、いまだに日本のネット上には歯周病と、動脈硬化の関連性をうたっているサイトが山のようにありますが…)
ではなぜ、このような事が起きてしまったのか? また、情報が独り歩きしてしまったのか?
確かに日本でも、自分たちの専門分野の重要性を訴えるため、その分野の疾患について少し大げさにアピールする傾向があります。最近テレビCMで、医科の病気に対するモノが多く流れているのな…と感じているのですが、おそらくそれもその一環でしょう。そしてテレビ番組の中には、健康に対する情報を大げさに扱う番組があふれています。
このようなセンセーショナルな主張は、ある種の人たちを満足させ、またそのような刺激的な提案を(色々な意味で)喜ぶ人たちがいる事も事実だと思います。
また、医科(歯科も含め)の分野は非常に専門性が高いため、一般の方が客観的な判断をすることが難しいという事もあり、結果どんどん過激になり、後から考えると実際とかけ離れた、かなり誇張した内容になってしまうという事件が起きるわけです。
私達は恐怖心が絡むと、物事を客観的に判断しづらくなくなります。(その典型が壺などの霊感商法だと思います)僕もいち医療人として決してその様な事がないように、自分自身がその種の主張に踊らされないように、また患者様を惑わすことが無いように、客観的なデータを常に持ち続けたいものだと改めて感じました。
ではデンタルフロスは必要ないのか?当然そんな事はありません。歯周病予防、虫歯予防にはとても重要なので、その事はまた別の記事として改めて書かせて頂きます。?
山口真史?