台風と歯痛
本格的な台風のシーズンになりましたね。
これから秋にかけては、台風が来ると歯が痛くなるという方がまれにいらっしゃいます。
その主な原因は低気圧です。
台風は低気圧を伴うものですが、この低気圧が歯の痛みの原因になることがあります。
低気圧そのものが神経を刺激して痛みを引き起こすケースもありますが、歯は内部の空洞と外圧に差があることで痛みを生じやすくなります。
外圧の低下が原因といわれている歯痛の典型的なケースは、飛行機に乗った場合です。
これは、上顎洞と呼ばれる、眼の下にある空洞の空気が膨張されるために、それが刺激となって脳に伝わることで、もともと痛みがなかった歯なのに痛みを感じるという症状(航空性歯痛)です。
富士山の上では、お菓子の袋が膨らんでしまうのをご存じですか?
これと同じようなことが歯の中でも起こっているのです。
必ずしも患部に原因がなくても痛みが起きることもありますが、これは「関連痛」といわれるもので、痛みの原因となっている部位とは違う場所で痛みを感じることをいいます。
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痛みは、神経が電気信号を脳に伝えて認識されます。
しかし、複雑に枝分かれした神経が脳にそれを伝える途中で交わるため、まれに脳が勘違いして、原因となっている部位ではないところに痛みを感じてしまうというわけです。
アイスクリームなど冷たいものを食べた時に、のどの咽頭神経が刺激され、後頭部やこめかみにキーンとした痛みが起こるのも、関連痛としてよく知られている例です。
そのほかにも、
「心筋梗塞が原因なのに首や顎が痛む」
「激しい頭痛で歯が痛い」
というのも関連痛です。
上顎の歯に原因があっても下顎の歯が痛いと感じる場合があるように、痛みは複雑なので、歯科を受診される際には、痛みの状況をよく相談して下さい。
台風が近づいた際の歯痛や航空性歯痛は、通常はそれほどひどい痛みにはならないものですが、気圧変化で歯が痛むのは虫歯があるケースが多いです。
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季節の変わり目には体調を崩しがちですから、歯の痛みも健康の注意信号だととらえて、十分に原因を調べてみることをお勧めします。
森山 知子