[’09/8/16] 思いを形にする(43) ドクター模型実習
ヨリタ歯科クリニック入職1年目のドクターには、様々な形で研修を行っています。
まず1ヶ月目にアシスタントとして、チェアーサイドでの研修。
研修2ヶ月目は、受付研修。
そして3ヶ月目は、模型実習。
お口の中に入れた詰め物や、かぶせ物が取れたり、中でむし歯にならないよう、
出来るだけ、長く使えるようにする必要があります。
そのための正しい削り方、使用する器具やバーの種類など、
私たちの医院での、決まりごとがあります。
それを、3ヶ月で学んで頂きます。
といっても、その後すぐに患者様のお口の中で行うのではありません。
まずは、歯の石膏模型や抜去歯などで実習します。
「1週間で、約100本の練習をして下さいね。
それを1ヶ月やり続けると、ある程度手が動くようになりますからね。
それを、治療で役立てて下さいね。」
と、若い前途有望な先生方にお話します。
今の若手ドクターは、真面目。
「ハイ、分かりました。今日からやります。」
二つ返事で、返ってきます。
そして1週間後、大きな袋に石膏模型100個を入れて、嬉しそうに私に持ってきます。
「先生、約束通り100個作ってきました。どうでしょうか。」
もちろん言葉通り一生懸命作っていますので、それなりに誠意は伝わります。
今日は○○個、明日は○○個、明後日は○○個と計画を立ててやってきたのでしょう。
出来た模型を数えながら、私の喜ぶ笑顔を思い浮かべながら…。
ここで私の胸に、一つの疑問が起こります。
本当に、それでいいのか。
誰のために、やっているのか。
何のために、やっているのか。
模型実習のその先に、あるものは。
話を、最初に戻します。
この若手ドクターの実習は、患者様のためにあるもの。
決して、私(院長)のためではありません。
そして患者様のためになることは、もちろん自分のためになるもの。
100個作ってねと言われ、期限に合わせピッタリ100個作るのは
ただ、やらされているだけ。
楽しくない。
集中出来ない。
だから私の顔を浮かべ、数を数えながらやるのではなく、
集中して一心不乱に時間を忘れ、没頭してほしい。
ただ、目の前の患者様だけのために。
だから、結果的に数を数えたら、
「3日で100個になっていました。1週間で200個越えました。」とニコニコしながら
私に持って来てほしいと、思います。
私は渋い顔をしながら、模型とにらめっこしながら、
「ここをもう少しこうして、ここは違う」と眉間にしわを寄せて、
出来ていない所を、注意することはありません。
私がアドバイスするのは、どこを見ているのか、
誰を見ているのか、何のためにそれをやるのか。
ただ、それだけ。
最初は上手削れなくても、その気持ちがあれば必ず上手くなります。
この一生懸命さは、患者様に伝わります。
また、最初に持ち合わせた才能により、人より少し上手く出来ても、心がけなければ、
さらに向上することは、ありません。
すぐ成長は、止まってしまいます。
それは、ゴールを見ていないから。
童話「うさぎとカメ」は、それを明確に物語っています。
最後に勝ったのは、カメ。
目の前を見るのではなく、相手と比べるのではなく、遠い先のゴールを見る。
人と比べるのではなく、昨日の自分自身と比べてみる。
それが大切である、と思っています。
思いを形にするためには、まだ見ぬゴールを明確にすることが大切です。
<一歩ずつゴールに近づくカメになりたい 寄田幸司>