[11/11]上海研修(2日目)
今日はいよいよ、現地視察ツアーです。まずは㈱ニッシン上海工場の見学。
案内は㈱ニッシン 専務の宮本浩さん。現地ニッシン社長 楊方さんです。
私たちは、チャーターバスで、ハイウェーに乗り、約1時間強の昆山へ。
昆山はこの10年間で、人口16万人から120万人に急成長。さすが計画経済の国。
日本では考えられない事です。あっという間に、大きな道路が出来、周囲には高層マンション群が生まれ、その周囲には緑が植えられたそうです。この国では一般的なマンションで、3LDK 約120~150㎡ 天井の高さ2.8mで約800万円くらいだそうです。
話がそれましたが、㈱ニッシンは歯科業界ではお口の模型などで有名、日本でのシェアは95%です。私も学生時代実習では大変お世話になりましたし、今も私たちの医院では、ドクター、衛生士向けの顎模型があります。
工場の玄関には企業理念が掲げてありました。
専務の宮本さんによれば、「物作りを通じた、人作り」だそうです。
ここでの工場見学を通じ、私はニッシンの物作りへのこだわりを知る事が
できました。まず模型で言えば全ての注文に完全に答える。
すなわち注文に応じ、一つ一つハンドメイドで作成するということ。
そのため、過去の製品サンプルは、6万件にものぼるそうです。
そして、ほんの小さな気泡やキズ一つでも見つかれば、
決して製品として出荷することはありません。
たとえ人件費などのコスト削減が目的で上海に進出したとしても、
その理念やコンセプトまでは、決して変えない強い姿勢が感じられました。
いや、逆かもしれません。一つ一つ手作りのハンドメイド製品、
しかも製品のレベル基準が私たちが見ても「そこまで厳しくしなくても」と思うくらい高い。
その品質を守りぬくため、あえて人件費が安い、そして人の確保がしやすい、この地を選んだのでしょう。
そしてその思いに集まった人が、たとえ生活のためとはいえ、誇りややりがいを持って働いている。
その姿勢を私は目の当たりにしました。
この工場見学を通じ、㈱ニッシンのファンになりました。
普段は決して見ることの出来ない工場内部をくまなく案内、説明して頂き本当に感謝しています。
また社員食堂で、従業員の方が食べる昼食まで体験させて頂きました。いや~美味しかったです。
その後日中歯科医学大会2005の会場へ。このコンベンションセンター国際ホテルも、巨大ホテルです。
参加者で大変にぎやかでした。
私は学会には参加せず、市内の技工所見学へ。名前は上海和生精密。
この技工所は3つの支店を合わせると、スタッフ150人程の現地では中型規模の所でした。
とは言え、ビルの28階、フロアは400㎡。私のイメージする技工所とは大きく違い、
清潔でクリーンな印象を受けました。
女性スタッフも多くいました。また保険制度の違いを感じました。
日本は保険中心、中国では保険ではほとんど治療が出来ないので、自費が多くなります。
それが技工物(かぶせ物)にもよく表れています。
臼歯(奥歯)がほとんどセラミックでした。そのため技工士さんも時間を気にすることなく、(数をこなす必要がない)、仕事に集中できるのでしょう。技工士さんの目が輝いている人が多かったです。
ここで中国歯科事情について。
2005年10月現在、中国の人口は13億を超えています。国土は日本の25倍です。
1978年から始まった一人っ子政策にも関わらず、未だに人口増加率は1.07%。
ピークは2030年16億人に達するそうです。ちなみに平均寿命は71歳。
歯科業界の話に移りますと、登録歯科医師たった56000人。都市部で人口3万人に対して1人。
地方では10万人に対して1人しかいません。日本では約2000人に1人です。
ということは、中国では圧倒的に歯科医師不足です。
そして基本的には治療は自費。
私たちがあなたにお話しているような、歯をむし歯や歯周病から守るという考えは、まだ根付いていません。インプラントや矯正治療もほとんどありません。
今の歯科事情を反映した病院見学に行ってきました。
上海市第十人民医院(国立病院)付属の歯科医院です。歯科医院というより、歯科の総合病院(4階建て)にいった感じでした。正式名称は口腔医病保険中心。
4フロアーごとに受付があり、受ける治療内容や費用により階が分かれています。
上に行く程、1日の治療時間を良く取り、より高度の治療を行うことが出来ます。当然費用も高くなります。
また、各診療室が全て個室になっています。
上の階の診療室には、ソファーやテーブルなどの応接室も併用されています。
心からリラックスして、ゆっくり会話を楽しみながら治療を受けて頂く事が出来るようになっていました。
夜は巨大ロブスター、アワビなどの本格中華料理を堪能しました。
今日一日でも本当に多くのことを学びました。
特に中国は日本と違い階層社会があることを改めて実感しました。
街中では怪しい歯科医院(無免許?)もあるとのことです。ここでは十分な設備もなく、
私なら恐くて入れない所もあります。
その反面自費ということもあり、専用待合室やアロママッサージなども同時に整える
高級サロンのような歯科医院も存在しています。このギャップは今の中国をそのまま現しています。
たった1日でその事が良く分かりました。
<この1日で多くのことを学んだ 寄田幸司>