院長ブログ

[’07/5/30] 北欧視察研修で思うこと

No.1デンティストクラブ主催の北欧視察研修ツアーに参加しました。
日程は、5月1日から7日の7日間です。
その中で、フィンランドの首都ヘルシンキでの見学について
詳しく触れてみたいと思います。

まずはヴァンター市立保健所(歯科医院)を、見学しました。

ヴァンター市には5つの保健所があり、そこには複数の歯科医師が在中
しています。
また夜勤も義務付けられています。私たちが見学した保健所には
18名の歯科医師が勤務していました。

誰でも保健所内の歯科診療所で安く治療が受けられるため、
予約がなかなか取れないそうです。
より高度な治療を希望される場合は、個人の歯科診療所にかかる人もいます。

全国の歯科医師の約半数が保健所勤務。そして半数が個人開業しているとのこと。
また保健所では、0才~17才まで検診を主とした歯科健康プログラムがあります。
そのため、ヨーロッパでも砂糖摂取量が一番多いにも関わらず、
カリエスは最も少ないのが現実です。

その後ヘルシンキ大学見学
ここでも歯学部長であるJakko Hietanenさんが、
私たちを玄関まで迎えてくれました。

ヘルシンキ大学はフィンランドで最も古い歯学部
創立115年です。学生は40名。
5年の教育課程の後、1年の保健所での研修を経て
6年間で卒業します。

伝統的に、口腔衛生に力を入れている大学です。
卒業後、開業しながら週2~3日、保健所に勤務するドクターもいるくらいです。

また大学の授業料は無料、奨学金や下宿代も国からの援助があります。

歯科医師の数は全国で4500人。国の規模からみると日本とそう変わりません。
また、大学は研究の教育機関として大きな役割を持っています。

また卒業後年齢に関わらず、歯科医師が学べるカリキュラム
充実しているようです。
私たちの見学の時も多くのドクターが模型実習を行っていました。
日本の大学では、あまり見かけない光景でした。

市の中心部で開業している個人の歯科医院見学も行いました。
この歯科医院は、フィンランド全国で200ヵ所の医院を開設しています。
全医院で、350名の歯科医師が勤務しているとのこと。

また経営は株式会社が行い、
ドクターが株主になることも、可能だそうです。

この医院は21名のドクター、6名のDH、アシスタントは3名でした。
また院内に独立した歯科技工所があり、家賃を払って院内開業しているそうです。

またDHによる定期検診は、主に1年に1回約50分で、キシリトール、
フッ素の摂取方法やブラッシング指導を行っているとのこと。
検診は約15,000円くらい。その内、7割が患者負担という事です。

初診はもちろん完全個室
受付での対応も、カウンターが3つに分かれていて、
同時に、3人が予約を取れるようになっていました。

プライバシーの保護が、どこでも守られているのが印象的でした。

このように、フィンランドが予防大国である理由は、地域医療を
担っている保健所がはたす役割にあると思います。
日本のように1才半、3才半健診のため、すなわち虫歯を見つけるため、
保健所に検診に行くのではありません。
虫歯を作らないため、定期的に通っているのです。

そしてフッ素やキシリトールの摂取、ブラッシングなどの保健指導
受けています。
そして虫歯が見つかれば保健所に所属している歯科医師により、
安価で治療を受けることが出来ます。

歯科大学卒業後すぐの研修制度として、1年間の保健所勤務
義務付けられています。
予防啓蒙活動の大切さを、実感していただくためです。
このように国をあげての予防に対する取り組みが、
大きな成果を上げていると言わざるを得ません。

またスウェーデン、フィンランドの歯科事情を学ぶことで、
自分自身多くの気付きがありました。

日本では多くの歯科医師が独立開業の道を目指します。
その形態は、ドクター1名、スタッフ3~4名の規模です。
そのため企業で例えれば、経営者が、経理、人事、営業、人材教育など
全て一人で行う必要があります。
また診療においても、口腔外科(インプラント)保存科、歯周科、補綴科、予防歯科、矯正歯科、小児歯科、
審美歯科など全ての分野を一人でこなします。
その中で、高次元のマネージメント技術レベルの維持
並大抵のものではありません。

また日本では保険制度の中で多くの規制があり、診療報酬も
その対価に見合っていないことも多いです。
そして、削って詰めての治療重視の診療スタイルを強いられています。
すなわち、時間と人に追われる経営です。そして借金にも。

このように歯科医師過剰時代に入った日本の歯科業界では、
やりたいことが出来ず、やらなければならないことに追われる経営になります。
厳しいサバイバルゲームに生き残るための、経営にならざるを得ません。
その状況では気が休まる所がありません。やりがいや夢は見出しにくいでしょう。

しかしヘルシンキで出会った人々(これは歯科医師つながりではありません)は
皆笑顔で、主体的に生きているように見えました。
またセカンドハウスやヨットを持っている人も、多くいました。
また完全週休二日、金曜日も早く仕事を切り上げます。
天気がよければ仕事を中断し、公園などでのんびりしていました。
そこにはやりたいことが出来、人生を楽しんでいるように見えました。

そこで私が感じたこと。それは私たち日本人ももっともっと人生を楽しむべきだということです。
それは、何も、今以上に怠けて楽をするということではありません。
具体的には歯科医師として、自分を磨き上げ専門医としての明確な位置
確保するということ。
インプラントや矯正、ペリオや小児などその中の自分の得意分野を伸ばす事です。

長所を伸ばしそして自分に足りない部分は他人に補ってもらうことで、
グループ経営の道が開けて来ます。
そうなれば人事や経理などわずらわしいもの、自分でなくても出来るものから
開放されるようになります。
その結果、さらに自分磨きの時間が増えます。
やりたいことが出来、心から笑顔が似合う自分になれます。
そんな豊かなライフワークを確立し、歯科医師人生をエンジョイしたいと思いました。

今まで時間に追われ、多くの患者を診るのが当たり前だと思っていたことが、
実は特殊なことであることが理解出来ました。
広い視野に立った上で、自分の現在のポジションを冷静に見つめ直すことで
今後の進む道が明確になりました。迷いがなくなりました。

最後にNPO法人歯科医療所評価機構の皆様のお陰で、
素晴らしく貴重な体験をさせて頂くことが出来ました。
本当に有難うございました。

<心から笑顔の似合う自分になりたい 寄田幸司>

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