Vol.182 2014 ワクワク楽しい経営日記パート3 ~開業後数年後に起こる問題とその解決方法 その③~
D その他の問題
パートナー医院のオープンに向け、必要な医院レイアウト、内装、
コンセプトの明確化、それに伴う、ホームページ、小冊子、
オープンチラシの作製や、求人など全て私が行いました。
そのため、最初から結果が出ました。それは本当に有難いこと。
しかし、それからが大変でした。
私の考えや医院コンセプトを、パートナー院長やスタッフが、
正しく理解していなかったため、医院運営がうまくいかなかったのです。
スタッフが安定しなかったり、
スタッフ間の仲が悪くなったり、
院長とスタッフ間の関係が悪くなったり。
ヨリタ歯科クリニックでは、考えられないようなことが次々起こりました。
私も、日報などで報告は受けていましたが、介入は良くないと思い、
最初は静観していました。
……しかし、一向に良くなりません。
それどころか事態は、深刻になるばかり。
さすがにこれではダメだと思いヨリタメンバーを派遣、3ヶ月集中して
個人別のヒヤリングと、ヨリタ歯科クリニックでの院外研修を行いました。
そして、グループ間での配置転換と、降格も行いました。
この過程は、パートナー医院のメンバーはもちろん、
ヨリタ歯科クリニックメンバーも注目していました。
そう、私の経営者としての力量が、試されているのです。
だからこそ、短期間に、結果が出せてホッとしました。
大きな問題があり、それを乗り越えた組織は強くなります。
人は、成長します。
パートナー医院での出来事から、3年経過しましたが、
その時残ったメンバーは、全員今も仕事を続けています。
ヨリタ歯科クリニックが、大きく方向転換したとき残ってくれた
私が第2創業期メンバーと呼ぶ人たちも、10年経過した今も全員残っています。
トラブルを乗り越えることで、スタッフ間の結束はそれ程強くなるということです。
また、取引先とはこんなトラブルがありました。
■ 仕事は、作り出すもの
毎日私たちの医院に訪れる、技工所の営業マンの話です。
私たちの医院ではほぼ毎日、4つの技工所が訪れます。
彼らは毎日、
患者様の予約に合うように、詰め物やかぶせ、入れ歯などを届けてくれます。
また、新たに取ったお口の型も持ち帰ります。
4件もの技工所に、毎日の来て頂く理由は、
それぞれに技工所の長所、特性を生かし、技工物を振り分けているからです。
その一つの技工所の作製物が、最近気になっていました。
ひと言で言えば、思いが入っていない。
型取りは、治療でいえば最終段階です。
あとは私の思い通りのもの、期待する精度のものが出来れば、
お口の中にセットして、治療完了。
しかし、ある技工所の完成品が、私の気持ちを逆なでするのです。
単に納期に合わせて作っただけ、流れ作業で作っただけ、そう感じられたのです。
確かに、手を抜いているのではないことは理解できます。
お口の中では、ピッタリ治まります。
しかしハートが入っていない、作り手の顔が見えない…………。
歯型を通じて患者様のお顔を、想像していないのです。
そのため、ある日営業マンに、「年内は、取り引きしない」と明言しました。
今回の話のメインは、ここからです。
そのことを告げると、普通の営業マンは上司を連れて来て、
「申し訳ありませんでした。以後、気を付けます。」と、詫びるかもしれません。
しかし、彼はそんな通り一ペンのことはしません。
もちろん、媚びることもしません。
私がそんな事は期待していないことを、
今までの付き合いから、知っているのです。
では、彼が何をしたのか。
その答えは、『何もしなかった』のです。
正確に言えば、いつもと同じように、私たちの医院を訪れたのです。
そして、いつもと同じように、技工カウンターが石膏で汚れていれば清掃をします。
印象材(形を取る材料)が流しに付着していれば、きれいに取り除きます。
以前と全く同じように、笑顔のあいさつと共に来て、笑顔のあいさつと共に帰ります。
違うのは、届ける商品を持たずに来る、注文された商品がなく帰ることだけ。
それが2週間、当り前のように続きました。
そして今日、久しぶりに声を掛けてみました。
「いつも仕事出してないのに、来て頂いて有難う」
そして、返ってきた驚きの言葉。
「今までも、仕事が出ているから、来ていたのではないのです」
「来てから、仕事を作ります」
あまりに予想外のことなので、私はその言葉を聞いて鳥肌が立ちました。
「それって、どこで学んだんですか」
そして、その答えは。
「先生が、いつも言ってるじゃないですか。」
そうなのです。
私は以前、出来る営業マンになる秘訣を彼にお教えしたことがありました。
その中で、彼なりに解釈し、そして実践していたのでした。
自然とその考えが身に付き、行っていた行為です。
本当に、目からウロコの体験でした。
仕事は与えられるものではない、作り出すもの、見つけるもの。
このことを、身にしみて彼から教わりました。
思いがけないアクシデントや、不測の事態、
そんな予想外の出来事に出会った時こそ、その人の真価が問われます。
私自身、人としての見識の甘さ、
リーダーとしての未熟さを、思い知らされました。
決して、解決できないトラブルなど起こり得ないのです。
忘れることの出来ない1日と、なりました。
―――― 今回の学び ――――
ワクワク楽しい歯科医院には、乗り越えられないトラブルは発生しません。