“人生の旋律”を読んで
「人生の旋律」は、あの神田昌典さんの 新著です(講談社発行)。
戦争を生き抜き、富と名誉を、ほしいままにした、伝説の実業家 近藤籐太(コンドウ トウタ)。
この本は彼の人生を通じ、価値観が急速に変化している現代を、どのように生きればよいかを、 私たちに語りかける、ノンフィクション小説です。
この小説のキーワードは、家族愛。
2004年11月14日、88才で、オーストラリアで亡くなるまで、 幾多の成功と挫折を乗り越え、トウタが最後に得たもの。
長い間、どんなに手を伸ばしても、伸ばしても手に入らなかったもの。
それは、家族愛であったこと。
真の成功は、富や、 名声 で決まるものではない。人生にとって、本当に大切なものは、 目に見えるものではなく、 目に見えないもの。
すなわち、それは家族愛。
これこそ、トウタの人生を通じて、私の心に強く刻み込まれました。
人は、何故働くのか、収入を得ようとするのか。
ただ単に、富や名声だけでなく、そこには、愛する人を守る、 愛する人を幸せにする、そして、自分自身も満ち足りた気分に なる。
そこが、根底にないと、間違った生き方をしてしまうかも しれないことを教えられました。
日頃の忙しい生活の中で、ふと我に返ることが出来た瞬間でした。
そして、この小説のクライマックスは、トウタの死の12日前に、 オーストラリア、ゴールドコーストで開かれた、“フェアウェル・アンド・サンキュー・パーティー”と題された お別れ会。
ガンのため、余命いくばくもない、まるで枯れ木のような 身体 になった、主人公トウタが、 今までの感謝の気持ちを伝えるため、自ら主催 するパーティー。
例えるなら、謝恩会。
まさに新しい旅立ちの門出を祝うかのよう。
私は、こんなパーティー、開いたことありませんでした。
本当に素晴しいアイデアだと思いました。
そして、そのパーティーでの、トウタの最後のスピーチ。
「レディース・アンド・ジェントルメン」
「今日は…私はとても感謝しています。こんなにも美しい人たちと―― そう、あなた、そしてあなた、 会場にいらっしゃるすべての方と――一緒に過ごす時間を得られましたことを」
「私の時間は…担当医の話によれば…
とても限られています。
ですから、わたしのスピーチはとても短い、凝縮されたものになります…
光陰矢のごとし、と言いますよね。 生まれた日から今日まで…私は人生を謳歌してきました。
信じられないことですが…気づいたときには…もう88歳になっていました。
今思いますと…それは本当に一瞬のこと…でした。
ウィリアム・シェークスピアは言いました。
“Life is a theatre”人生は演劇だと…
今、皆さんとこうして集まって…私の舞台の…
私の…最後の舞台の幕を…
人生の幕を下ろすのですが…
こうして心からの親友と一緒に、最後の時を過ごすことができた、私の人生は、ほんの短い言葉で 要約できると思います…
なんと幸せな男だったのだろう…
なんと幸せな人生だったのだろう…」
胸が熱くなりました。
そして、パーティーのルール。
キープ・オン・スマイリング(涙を見せてはならない)。
彼には、涙は似合わないのでしょう。
このトウタの最後のシーンから、私は、多くのことを学ぶことが出来ました。
例えば人生の、最後の瞬間を、 私自身がどのように過ごすべきか、どんな言葉を、周囲の人に 投げ掛けるべきなのか。
そして、最後まで私と関わりを持って頂いた人、 親交を深めあった人、 そして、最後まで寄り添って頂いた家族に対する接し方、 愛情表現の仕方。
自分の人生、楽しく生きるも、 後悔し続けるも、その人の心のあり方、1つだと実感しました。
最後に引用文を。
「人の一生を走馬灯のように見たときに、本当に大事なものは限られている。
しかし、人は本当に大事なものから、もっとも目を背けてしまう。
日常の喧騒の中で忘れ去られたように見えるのだが、心の深い底では、大事なものはゆったりと 流れつづけ、そして長い時間をかけて、ボクらを、あるべき方向に運んでいこうとする。」
私のこれから進む方向が、より明確になりました。
キープ・オン・スマイル(いつも心にスマイルを)。
メロディー・オブ・ライフ(人生の旋律)。
私とあなたが、言葉なんていらない関係、心と心が連なりあう関係を今後も築いていきます。