[’06/6/25〕 「人」を診る歯科治療
今日は、岡山大学歯学部大阪支部総会がありました。
その中の学術講演では、おなじみの諸井英徳先生をお招きして、
1時間30分お話を聞かせて頂きました。
今回の演題は「予防型歯科医院の経営学」。
いつもながら、多くの気づきを頂くことが出来ました。
予防型歯科医院の最も特徴的なこと、それは
「来院者(患者様)の立場に立った、治療をしましょう。」
ということです。
すなわち「歯」を診るのではなく、「その人」を診る歯科治療です。
先生は「来院者の主観を交えた診断」という言葉を使っていました。
医療における治療方針や診断は、科学的であり、客観的そして絶対的であり、
ゆらぎないものでなければならないという固定観念が
私たち医療従事者にはあります。
しかし、患者様は、むし歯や歯周病だから来院されるのではありません。
ただ単に、しみるから、食事がうまくできないから、かむと痛いから、来院するのです。
その時々の患者様の来院動機や生活背景を聞き出したうえで、
適切な診療方針を 立てる必要があります。
昨日の朝日新聞の夕刊の14面に大きく、
「歯の治療法 座って相談」という記事がのっていました。
「歯科医と患者様が、治療方針などを話し合う相談スペースを設けた 歯科医院が増えている。
歯科治療をめぐる患者からの苦情やトラブルが絶えないことから、
インフォームドコンセントを確立して、患者様との信頼関係を構築しようとする
新たな取り組みだ」
本当に大切なことだと、日々の診療の中で痛感しています。
しかし、予防をベースとした歯科医院では、当たり前のことです。
今までが、患者様の心の声を聞かず、ただ、お口の中だけを見て、
診断、治療を行っていることが多かったのでしょう。
記事の最後に、
「歯科医が増えて、競争が激化する中、コミュニケーション能力も求められている」
というものがありました。
かなり疑問に思いました。
競争が激化したから、コミュニケーションが必要なのでしょうか。
私は医療人である前に、1人の人間として、
来院者のあなたと心からふれあいたいと思います。
そのため、お互いを知ることが最も大切です。
コミュニケーション能力のない医師が、適切な診断を下せるわけがありません。
例え、立派なカウンセリングルームがなくても、
例え、忙しく時間がとれなくても、
例え、スタッフの人数が足りなくても、
来院者の心の声を聞くための、私たちの心の余裕まで失ってはならないと思います。
私はこれからも、医療を通じ、その人の豊かな人生のサポートをしていきます。
そして、共に喜びを分かち合いたいと思います。
<カウンセリングの大切さを日々感じている寄田幸司>