Vol.15 理想の歯科医師を目指して パート3 ~歯科医師としての初めての仕事~
昭和62年4月、人生最後の春休みを満喫していた私が、海外旅行を終え、家に到着し、
まさにスーツケースの荷解きをしていたその時、一本の電話がありました。
その電話は、小室歯科供井事務長からのものでした。
「わざわざ長旅から疲れた私に、事務長からねぎらいの言葉をかけてくれるなんて」
「ここまで勤務医のために、配慮してくれる医院は他にない」
と、さらに私の決断が間違っていないと確信したその時、
電話の内容が明らかにされました。
「先生。誠に急で申し訳ありませんが、明日検診があるので、手伝っていただけますか?」
実は旅行から戻ったこの日、東大阪にある樟蔭女子大学附属の中学部で、
春の健康診断がありました。それに是非参加して下さいとのこと。
もちろん新米ドクター。断る理由はありません。いや、断るわけにはいきません。
2つ返事で、了承しました。
これが、私が歯科医師としての輝かしい第一歩をしるした仕事でした。
今思えば東大阪が、私の出発点になろうとは、夢にも思いませんでした。
本当に不思議、いや運命を感じます。将来がここに暗示されていました。
しかも、医師としての初めの仕事が、治療ではなく検診だったのです。
私は日頃、メンバーの皆様や来院者の皆様に
「歯科医師の仕事は、歯を削ったり、詰めたり、ましてや抜くのが仕事でない。
本当の仕事、やるべき事は、来院者の大切な歯を守り抜くこと」だと言い続けています。
その原点が、実はココなのです。
検診の時も
「○○さん、本当にきれいな歯並びをしていますね」
「むし歯ゼロで、よかったね」
「このまま、ずっといようね」
「また来年も、この健康な歯見せてね」といい続けてきました。
そのくらい樟蔭の子供たちのお口はきれいで、問題なかったのです。
実はこの日、私がお手伝いさせていただいた校医の先生は、
私を最寄の駅(小阪)まで、送ってくださいました。そして驚きの対応をして頂きました。
車を駅前に止めた先生が、すぐ運転席から降りられ、
後部座席にいる私のドアを、自ら開けてくれたのです。
深々とお辞儀をしながら、もちろんお礼の言葉を添えて。まだ駆け出しの私のために。
タクシーの運転手でさえ出来ない事を、初対面の私にしてくれたのです。
私にとっては、社会人1日目にして起こった、サプライズでした。
今でも、決して忘れることは出来ません。
全ての人に、感謝の気持ちをもって接することの、大切さを学びました。
今回の学び
初め良ければ全て良い