歯科版元気塾インタビュー
佐賀でのセミナーの前、いつもお世話になっている、
鳥栖市で開業している、成富先生と対談させて頂きました。
来年1月から始める、月刊デンタルダイヤモンド新企画
「歯科版元気塾(仮題)」でのひとコマ。
主旨は、こんな感じ。
若手勤務医(2~3年目・4~5年目)に、 また若手勤務医の悩みや疑問は、インタビュー形式で取材 若手勤務医の読者には、自らの悩みとオーバーラップさせ、 |
私たちの医院にも、現在4名の常勤勤務医がいます。
振り返れば過去、非常勤を含め、私たちの医院に勤務して頂いた先生は、約30名。
多くの若手歯科医師に、私たちの医院を選んで頂いたこと、
本当に、ありがたいことです。
大学を卒業してから、開業するまでの期間は、
歯科医師としての考え方、進む方向が決まる、大切な時期。
だから、勤務先で何を学ぶか、誰の基で働くかで大きく変わってきます。
また、お預かりする私たちにとっても責任重大。
本気の指導、本気の育成が、求められています。
ここで勤務して良かった、ここだから成長出来た、
今あるのは、あの時期があったからこそ。
そう言って頂ければ、嬉しいです。
ということで、私がお話しした内容は、
私の勤務医時代、何を考え、行動していたのか、
開業にあたって、思い描いていたこと、
実際開業して、学んだこと、
これから開業する、勤務医の先生方へのメッセージ
などです。
今は、歯科医師過剰時代だと言われています。
また、医療費も抑制、不況のため、受診抑制も起こり、
病人になれても、患者になれない人も、増えていると言われています。
そんな時代だからこそ、今後開業を目指す勤務医の先生方には、
将来の自分、理想の自分の医院を明確にし、
周囲に迷わされることなく、時代や人のせいにするのではなく、
自分を信じ、明るい未来を信じ、一歩ずつ、力強く歩んで頂けたらと思います。
保険点数は本当に適正か?
●成富
「こんにちは、よろしくお願いいたします。
保険点数に関して確かに採算が取れる分野と不採算なものもあります。
特にここでお話しいただいているように根管治療に関する事などは、
この若い先生方のおっしゃる通りだと思います。
ただ私自身は、低い点数ではありますが、腐らずに患者さんの治療に
一生懸命に取り組むことで自費治療を希望されたり、
後になって欠損が出て来たときにインプラントを考えて頂いたりという経験が多くあります。
先生はいかがでしょうか?」
●寄田
「確かにそう思います。私が勤務医のとき、昇給とかボーナスは全て歩合制でした。
毎月の月例会で売り上げが発表される刺激いっぱいの医院に、4年間いました。
患者さんが配当される場合、自費に繋がりそうな大きなケースは、先輩が見る事になります。
私たち新人ドクターは、簡単な保険のケースばかり。点数にならないケースがほとんど。
しかし、ピンチはチャンス。ここで私は、大きく成長する機会を与えて頂きました。
何故なら、保険治療をしっかりやる事で、信頼関係が出来、その結果、自費に繋がりました。
また、その人は自費にならなくても、自費を希望する患者さんを紹介してくれました。
紹介患者さんは、必ず私が担当する事になります。その結果、新人にも関わらず、
どんどん自費が出ました。保険の患者様がいるから自費も出るのです。
どんなケースでも手を抜かないで一生懸命に取り組む姿勢が大切。
また、ドクターの誠実な患者対応を、アシスタントが見ています。
患者様よりアシスタントの方から、この先生はスゴイと言ってもらうのが大切です。」
●成富
「4年ほど前に先生の講演を聴いたのもきっかけとなって私の医院でも
予防に力を入れるようになりました。そういった患者さんは、“自分の歯を守りたい”
というように健康に対する価値観が高い人が多いですね。
そんな患者さんはもし、欠損が出てもブリッジではなくインプラントを選択される事も多いし、
長いおつきあいの中で私たちが関わってレベルの高い治療
いわゆる自費治療を求められる事が、多いのではないかと思います。
“予防”はお金にならないと言われる先生もおられますが、
これも保険治療と同じで“今お支払いいただく金額が低い”という理由でやらなかったり、
手を抜いたりする事は長期間にわたってもたらされる利益をみすみす、
手放す事になるんじゃないかと思います。」
●寄田
「定期的に通う予防の患者さんは、確かに健康観が高い人が多いですよね。
私たちの医院では、インプラントや矯正に繋がることも多いですよ。
私は来院してくれた患者さんと一生のお付き合いをするために、
予防が何より大切だと思っていますし、本気で取り組んでいます。
そしてその結果として自費率が上がって、紹介の患者さんも増えています。」
●成富
「しかし、お金のこともですが、やはり関わっていただける患者さんに
楽しく健康で来院いただけるということは、カッコつけではないけれど
私たちやスタッフの心の栄養ですよね。」
●寄田
「同感です。私が予防に力を入れるようになったのもある講演を聴いて、
ワクワク楽しい歯科医院を作るぞ!と、心に決めたことが始まりですから・・・」
スタッフ問題は誰にでも起こる?
●成富
「スタッフが勤めてくれるだろうか・・・という心配もされていますが、
私自身もスタッフ問題では結構鍛えられました(笑)なかなか上手にコミュニケーションが取れずに、
開業して1年ごとにスタッフの総入れ替えという新装開店状態が3年間続きました(笑)
その後もなかなか院内でのコミュニケーションが取れない事が続きました。
かなり改善してきましたが、もっと頑張らなくちゃと言う感じです。」
●寄田
「開業時Dr私一人、衛生士3人でオープン。
結構患者さんにも恵まれました。その当時の私は、天狗になっていました。
4ヶ月経ったある日、この3人が“今日でやめます”と言って来ました。
その時、私の口から出た言葉、“その嘘、本当”。
意味不明、試行回路停止。次の日から、一人ぼっちになりました(笑)。
しかも、有難いことに、その日は予約40人。シビレました。
他にはない最高の経験をしました。
その後もスタッフ問題では、かなり苦労しました。経営者としての自分の未熟さを、実感しました。
スタッフ問題は、ほとんどの先生が経験していると思います。
しかし、逃げても何も解決しません。心からスタッフを愛すること。
当り前のことに感謝すること。
自分に非があれば素直に謝ること、スタッフから教えて頂きました。」
お昼休みを最大に活用する方法
●成富
「一度土壌が出来るとあとは楽に成長して行きますよね。
その成長のためには、院内のコミュニケーションが十分に取れている必要があると私は、
今まで経験して来た事の中で実感として思います。
先生は、スタッフやDrの皆さんとのコミュニケーションを円滑にするために
日常で取り組まれている事ってどんな事がありますか?」
●寄田
「毎日、さまざまなセクションの人とミーティングを通じ、お昼休みに話しています。
Dr、受付、衛生士、アシスタント、幹部・・・など10分〜15分、長いときは30分くらい。
強固なチームワークを築くためには、心からのコミュニケーションが必要不可欠。
「言わなくてもわかるだろう」は嘘。
当たり前ですが、話をしないと分かり合えません。」
●成富
「毎日の小さな事の積み重ねって本当に大切なんですね。
土壌が既に整っていながら毎日コミュニケーションの積み重ねを続けておられるのは
本当に素晴らしいですね。
スタッフ問題に関して若い先生たちが今、やるべき事って何だと思いますか?」
●寄田
「成功する歯科医師の定義について、勤務の先生と話す機会がありました。
技術、知識、リーダーシップ能力、いろいろあるでしょうが、
私の考えは、ズバリ、スタッフの皆さんに“この先生は成功する”と思われる事。
彼女たちは、診療中の先生の周囲への心配りとか、感謝の気持ち、そして仕事のクオリティを見ています。
成功の近道は、一番近くにいる彼女たちに信頼される勤務医になる事です。」
●成富
「確かにそうですね。これだったら今すぐ取り組んでもらえそうです。
もう一つ質問ですけれど“勤務医をしているときは結構スタッフに人気があったけど
開業したら人気どころかなかなか話をしてもらえなくなった”という話もよく聞くのですが、
これについてはどう対処したら良いと思われますか?」
●寄田
「私たちの医院でも、このような事例はたくさんありました。
人気があるのは、同じ従業員レベルでの話。
すなわち、親しみやすいとか、気さくで話しやすいとかのレベルではないでしょうか。
もしくは、同じ敵(もしかしたら院長)に対する、同胞のような関係であったのでは。
それでは立場の全く変わる開業では、うまくいくはずありません。
開業してもスタッフとの関係が良好なドクターは、勤務医時代からスタッフから一目置かれた存在。
すなわち、人として思いやりと優しさにあふれ、そして、高い志と不変の信念を持った人物。
実際にはなかなかいません。
そう、開業して初めて、前勤務先の院長の偉大さを実感するものなのです。」
本気ならきっと伝わるはず!
●成富
「機材やセミナーが高額だという事ですが、私の経験では本当に活用できる機材で
今後の医院の発展のためにも役に立つ機材であれば院長の考えもあるでしょうが、
きっと導入したいと思うはずです。少なくとも私はそう思いますし、
そんな院長先生は決して少なくないと思います。
その機材がどのように医院に役に立ってどんな効果がもたらされるのかを
院長先生と向き合って話し合うべきだと思うのです。
セミナーに関しても全く同じ事です。
このようにして話し合う事で院長先生も医院の発展を図る事が出来る訳ですし、
お願いする勤務の先生にも利益があるはずです。しかし、このお話の内容を見ると
そんな働きかけがあったかどうかが見えてこないのですよね。
初めから高いからとあきらめていては、なにも変わらないと思うんですよね。
院長先生に熱意を持って伝えてお願いする事が必要だと思うのですが」
●寄田
「本当に医院の為になるものであれば、提案してほしい、
良いものであればもちろん買ってあげたいと思います。
もし、買ってくれないとしたら、院長先生から信頼を得ていないのでは。
機材が高いとか安いとかという問題ではなく、
その先生が本当に医院のためを思って提案しているかどうか。
日頃の信頼関係と、密なコミュニケーションが大切です。
また、院長も日頃から勤務医のいい点を見つけ、励まし、
そして伸ばすためサポートをしていく必要があると思います。
提案もせずに、“買ってくれない”と決めつけて、陰で愚痴を言っても何も始まりません。
勇気を持って正しいと思うことは、言っていきましょう。」
幸せな歯科医師になるために
●成富
「私にとって、歯科医師の友人では、
自分が幸せだと思っている人が少ないと言う事が、とても衝撃でした。
少なくとも今も過去も歯科医師になって幸せだと思えないというような事は自分には無かったのですが・・・。
私が思うには、“こうなりたい”という姿が見えていないのではないかと思うんです。
もし、それが見えていれば少しずつでも自分がそこに近づいている事に
充実感や幸せ感が得られると思うのですが・・・。」
●寄田
「どんな些細なことにでも、幸せだなと感じるように自分の考え方を変える必要があります。
幸せを実感出来る時は、自分は人から支えられている、助けられていると、守られていると感じている時。
そのためには、まず自分が周囲の人を支え、助け、そして守る人であることが大切。
自分はこれだけやっているという自己主張だけでは、幸せには決してなれません。」
●成富
「歴史に残るような多くの人々に貢献して大きな足跡を残した方に
“私は 幸せではなかった”と言った人をあまり聞いた事がありませんものね。
先生から若い先生にメッセージをお願いします。」
贈る言葉
●寄田
「勤務医の時から、“どんな歯科医師になりたいのか” “どんな歯科医院にしたいのか”
“どんな人と一緒に仕事がしたいのか”そして“どんな患者様に来て頂きたいのか”を
いつも意識しながら過ごして下さい。
そして、もっとも大事なのは、勤務医でいる限り
“院長に喜んでもらう”ということを念頭において、行動すること。
私は、入職時から院長に“この先生がいてくれて良かった”とか
“この先生がこんなに大きな功績を残してくれた”と、言ってもらえるDrになろうと決意していました。
何も出来ない新卒歯科医師である私を採用し、
その上貴重な時間をさいて研修までさせて頂いているということに、
すごく恩を感じていました。受けた恩は、返さねばなりません。
たった4年の勤務でしたが、大げさに言えば、
退職後伝説として語り継がれるような勤務医になると誓いました。
自分の持てる全てを精一杯提供し、院長に喜んでもらう事が出来れば、
自分の置かれている環境さえも変化してきます。
喜んでもらえば、自然と自分の周りの環境も良くなる、
提案も通りやすくなる、期待もさらにかけてもらえます。
言わなくても態度で示すことで、形になるのです。」
●成富
「確かにそのような観点から見ると、この先生方のお話の中で色々と環境に対する不満などは
よく見えるのですが、ご自分がその環境を変えようとしている様子が見えてきませんよね。
もっと自分からやれる事を見つけて、行動を起こすべきだと思います。
すぐに結果が出るとは思いませんが、壁にぶつかりながらでも、
少しずつでも改善していくと思います。」
●寄田
「置かれた環境に対し、愚痴を言っても始まらないと思います。
まずはその環境の中で、自分が出来ることをすべてやり切る、
しかも笑顔で楽しく、前向きに。そして結果を出す。
そうする事で周囲から認められ、次のステージへと導かれます。
人の可能性は無限大。全ては自分次第。
自分の力を信じ、明るい未来を信じ、日々努力して頂きたいと思います。」
●成富
「マイナスのまま愚痴を言いながら抱え込むのと改善に向かって進んでいくのとでは、
大きな差が出てきますね。
そのような提案から良い方向への変化を院長先生もきっと喜んでくれるはずだと思うんです。
そうすればもっと良い関係が生まれると思います。ぜひとも若い先生方には、
自ら環境を変えるように働きかけて頂きたいと心から希望します。」