[’05/08/10]「人生の旋律」を読んで
「人生の旋律」は、あの神田昌典さんの新著です(講談社発行)。
戦争を生き抜き、富と名誉を、ほしいままにした、伝説の実業家近藤籐太(コンドウ トウタ)。
この本は彼の人生を通じ、価値観が急速に変化している現代を、どのように生きればよいかを、
私たちに語りかける、ノンフィクション小説です。
この小説のキーワードは、家族愛。
2004年11月14日、88才で、オーストラリアで亡くなるまで、幾多の成功と挫折を乗り越え、
トウタが最後に得たもの。
長い間、どんなに手を伸ばしても、伸ばしても手に入らなかったもの。
それは、家族愛であったこと。
真の成功は、富や、名声で決まるものではない。人生にとって、本当に大切なものは、
目に見えるものではなく、目に見えないもの。
すなわち、それは家族愛。
これこそ、トウタの人生を通じて、私の心に強く刻み込まれました。
人は、何故働くのか、収入を得ようとするのか。
ただ単に、富や名声だけでなく、そこには、愛する人を守る、
愛する人を幸せにする、そして、自分自身も満ち足りた気分に
なる。
そこが、根底にないと、間違った生き方をしてしまうかも
しれないことを教えられました。
日頃の忙しい生活の中で、ふと我に返ることが出来た瞬間でした。
そして、この小説のクライマックスは、トウタの死の12日前に、
オーストラリア、ゴールドコーストで開かれた、
“フェアウェル・アンド・サンキュー・パーティー”と題されたお別れ会。
ガンのため、余命いくばくもない、まるで枯れ木のような
身体になった、主人公トウタが、
今までの感謝の気持ちを伝えるため、自ら主催するパーティー。
例えるなら、謝恩会。
まさに新しい旅立ちの門出を祝うかのよう。
私は、こんなパーティー、開いたことありませんでした。
本当に素晴しいアイデアだと思いました。
そして、そのパーティーでの、トウタの最後のスピーチ。
「レディース・アンド・ジェントルメン」
「今日は…私はとても感謝しています。こんなにも美しい人たちと―― そう、あなた、そしてあなた、
会場にいらっしゃるすべての方と―― 一緒に過ごす時間を得られましたことを」
「私の時間は…担当医の話によれば…
とても限られています。
ですから、わたしのスピーチはとても短い、凝縮されたものになります…
光陰矢のごとし、と言いますよね。生まれた日から今日まで…私は人生を謳歌してきました。
信じられないことですが…気づいたときには…もう88歳になっていました。
今思いますと…それは本当に一瞬のこと…でした。
ウィリアム・シェークスピアは言いました。
“Life is a theatre”人生は演劇だと…
今、皆さんとこうして集まって…私の舞台の…
私の…最後の舞台の幕を…
人生の幕を下ろすのですが…
こうして心からの親友と一緒に、最後の時を過ごすことができた、私の人生は、ほんの短い言葉で
要約できると思います…
なんと幸せな男だったのだろう…
なんと幸せな人生だったのだろう…」
胸が熱くなりました。
そして、パーティーのルール。
キープ・オン・スマイリング(涙を見せてはならない)。
彼には、涙は似合わないのでしょう。
このトウタの最後のシーンから、私は、多くのことを学ぶことが出来ました。
例えば人生の、最後の瞬間を、私自身がどのように過ごすべきか、どんな言葉を、周囲の人に
投げ掛けるべきなのか。
そして、最後まで私と関わりを持って頂いた人、親交を深めあった人、そして、最後まで寄り添って頂いた家族に対する接し方、愛情表現の仕方。
自分の人生、楽しく生きるも、後悔し続けるも、その人の心のあり方、1つだと実感しました。
最後に引用文を。
「人の一生を走馬灯のように見たときに、本当に大事なものは限られている。
しかし、人は本当に大事なものから、もっとも目を背けてしまう。
日常の喧騒の中で忘れ去られたように見えるのだが、心の深い底では、大事なものはゆったりと
流れつづけ、そして長い時間をかけて、ボクらを、あるべき方向に運んでいこうとする。」
私のこれから進む方向が、より明確になりました。
キープ・オン・スマイル(いつも心にスマイルを)。
メロディー・オブ・ライフ(人生の旋律)。
私とあなたが、言葉なんていらない関係、心と心が連なりあう関係を今後も築いていきます。
人生の生き様から多くの事を学んだ 寄田 幸司