院長ブログ

[’06/11/1] 雨の日のベンチ磨き

昨日来院された、入れ歯の患者様が、
少し不満そうに私に話しかけられました。

「入れ歯の修理をするまでは特に思わなかったのですが、
昨日の修理後、入れ歯が浮いたようになって、舌がすれて痛みます。」

担当医に確認すると、
「入れ歯があっていなかったので、ウラ面に安定剤をぬりました
ということでした。

それ自体は問題ありません。
しかし、その後があまりよくなかったのです。

一言でいえば、少し雑。
もっと、丁寧に心を込めて仕上げて欲しかった。
角が少しとがっていたり、入れ歯のふちが少しざらついていたり。
やはり、完成度が足りない。
そこに、思いが込められていない。

担当医にとっては、その入れ歯を手にとっている時間は、
ほんの10分~15分。

しかし、患者様は、1日じゅう入れ歯のお世話になるのです。
ほんの少しでも、歯ぐきへの当たりが強ければ食べるどころか、
入れているだけでも、苦痛になります。

それを、是非わかってほしいです。

入れ歯の修理後、
なぜ、入れ歯の裏面を入念にチェックしなかったのか。
ざらつきはないか、とがっていないか、安定剤がはがれていないか、
ほんの少しの愛情と、心配りがほしかった。

入れ歯をただ単に、食事をするための道具としてみないで、
人の体の一部として大切に扱ってほしい。

患者様はこの1日、どんな気持ちで過ごしたか、
それを考えてほしい。
今日このクレームを言うのに、どんなにためらったか。
その気持ちを察してほしい。

医院にとっては、1日100名以上訪れる患者様の一人かもしれません。
しかし、患者様にとっては、「自分は特別なんだ」と思ってほしい。
その気持ちを、くんでほしい。

ディズニーランドでは、雨が降っていても、ベンチをきれいに磨きます。
水をふき取っても、ベンチはスグにぬれてしまう。
“雨が降っている”のいるのだから、当たり前です。
そして雨の日は、誰もそのベンチに腰かけることはありません。

なのに一生懸命ベンチをふきます。
その理由は、ベンチが安全で、快適であるかを確かめているのです。
ベンチにささくれがないか、ペンキのはがれはないか、
釘がゆるんでいないか、手すりはしっかり固定されているか
それをくまなく調べるため、天候に関係なく、定期的に調べているのです。

ディズニーランドを楽しんで頂くための最も大切なもの
それは安全で快適であること。

私達は医療に携わっています
その立場の人間こそ、安全で快適を最優先しなければなりません。

家族との会話が弾む、楽しい食事ができるだろうか。
最高の笑顔で、その日1日を過ごすことが出来るだろうか。
そして、今日も来て良かったと言って頂けるだろうか。

さまざまなことを考えながら、毎日使う入れ歯を入念にチェックして下さい。
私たちのコンセプトや理念、文化に共感した、
志の高い担当医のあなたなら出来ると信じています。

そう、ディズニーのコンセプトや理念、文化に共感した、志の高いキャストのように。

<雨が降ってもやりつづけなければならないものがある 寄田幸司>

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