[’07/6/30] 他利を優先
昨日は、患者様より2つのクレームを受けました。
1つは、先日カムカムクラブに見えられた子供さんのお父様からでした。
いつものように、3ヶ月に1度のカムカムクラブに来院。
1年間虫歯ゼロで表彰状(カレンダー)をお渡しした直後、
学校検診がありました。
そして虫歯があるとの、結果報告を頂いたとの事でした。
今日、「どういうことでしょうか?」と言う
素朴な疑問を検診結果と共に持って来られたのです。
ここまでは学校検診の時期には、よくある話。
私たちは、12才で歯並びの美しい、虫歯のない永久歯を
作るため、真剣に虫歯ゼロに取り組んでいます。
実際、その思いに賛同して頂き、
多くの子供たちが、カムカムクラブに入会されています。
今回のクレームも3ヶ月に1度通う、意識の高いご家族から
頂きました。
私たちの医院だからと、信頼を寄せている人達です。
私が残念に思ったのは、小児担当医のドクターは検診結果を見て
少し着色した虫歯と疑わしき所を削って詰めたことです。
この着色は、本当に削って詰めなければいけなかったのか、
そう私は、単純に思いました。
もしかしたらこの子供さんは、今まで通り予防処置をしていたら、
カリエスフリーの虫歯のない永久歯でいられたのではないかと、私は思いました。
歯を削らないために、虫歯にならないために、
カムカムクラブに通い続けているのです。
学校検診など条件の悪い所で、“疑わしい虫歯がある”との診断を
そのまま信じ、大切な永久歯を削ったのではと、
残念で残念で本当に残念で、仕方がありません。
もし、私の耳に最初にクレームが届いていたらと思うと心が痛みます。
“早期発見、早期治療”は、ある意味間違っている。
小さな初期虫歯は、削らずに予防処置で治る。
だから、定期的にフッ素クリーニングをしましょう。
そう言い続けて、子供たちや保護者の方に接して来ました。
今回の事は、その根幹を揺るがす行為であると思います。
何年間もの間、虫歯にならないために、来院している
お父様と子供さんの気持ちを考えると、何とも申し訳ない気持ちで一杯です。
今後はこんな行き違いが起こらぬよう、再度カムカムクラブ設立の意味、
歯を削らないことの大切さを、言い続けます。
さらに、残念な出来事がありました。
約1年前に自費で入れた右下部分入れ歯を、紛失された患者様が来院されました。
自費の入れ歯を入れていた理由は、無くなった歯の前方の歯が虫歯のない天然歯で
出来るだけこの歯を削らずに咬めるようにしたい。インプラントに対して
少し不安もあるとの事で、今回は取り外しの入れ歯を選択された人でした。
その入れ歯を失くされたための、来院です。
その時の担当医の診断。
「右下奥の入れ歯の支えになっている歯が歯周病でよくないので、入れ歯は
長く持たないと思います。インプラントにしましょう。」
確かに、その歯だけを見れば予後不良のため、新たに入れ歯を作っても
長く持たないのかも知れません。それはある意味正論です。
しかし、患者様の立場からすれば、自分の気持ちを何も考えてくれていないと
感じられたのでしょう。
虚しさと行き場の無い憤りが、こみ上げて来られたでしょう。
やはり正しくは、「まずはすぐに新しい入れ歯を作りましょう。
勿論1年前に作られたばかりなので、失くされたとは言え、費用はかかりません。
同じものを作ります。今後数年で奥の歯がダメになる可能性もあります。
そして、将来、奥の歯がダメになった時は、この入れ歯が使えなくなる
可能性があるので、その場合は新たに作らせて下さいね。
また、入れ歯が大きくなり違和感があるようだと、インプラントも再度検討しましょう。」
まずはしっかり右奥で咬めて、しかも費用に対する不安を取り除くことを
最優先すべきでしょう。
たとえ患者様から今すぐインプラントにしたいとご希望があったとしても
インプラントが入り、咬めるようになるのは早くて2ヵ月後。
その間は、入れ歯が必要になるのです。
歯を見て人を見ず、人を見ずしてその人の生活環境や慣習を見ることは出来ません。
自分の利益や立場より、患者様の利益や立場を優先することが第一。
他利を優先する姿勢がないと、そこからは何も生まれません。
仕事の原点にいつも立ち戻って、その状況に合った判断をしていきたいと思います。
医療法人ヨリタ歯科クリニックは、来院者皆様の利益と幸せを第一に考え、
そしてとことん追求する企業であり続けたいと、心から思っています。
<人それぞれ思いは違う 寄田幸司>